
生きている昆布から「ダシ」がしみ出すことはありません。
昆布は乾燥して、熟成させることではじめて「昆布のうまみ:ダシ」が生まれます。
生きている昆布では、昆布の成分が海にしみ出すようなことはなく、逆に海から様々な栄養分を取り込んで成長しています。ただし、昆布が枯れてしまった場合には、このような働きは止まってしまい、酵素や微生物の働きで分解されますので、海中に昆布の成分が出て行くことはあります。
9月過ぎの北海道沿岸では、枯れた海草からこのような成分が出て、海が「どろっと」した状態になることが
あります。
この場合にも海が昆布だしの味になることはありません。乾燥した昆布からは美味しいダシがとれますが、海の中で生きている
昆布にはこれほどの『うまみ』がないからです。
昆布は天日で乾燥させることで、うまみ成分が生成され、奥深い味わいが生まれます。昆布の産地では、晴天の日に、昆布を玉石の
上に並べ、天日で乾かす様子を見ることができます。これは太陽の光で暖められた玉石から「遠赤外線」が放射され、昆布の内側から
ゆっくりと乾燥しているのです。この過程でうまみ成分が生成され、さらに数ヶ月間、湿度、温度を一定に保った保管庫に昆布を入れて、味を熟成させています。
昆布によってはさらに一年、二年と熟成されて出荷される場合もあります。
こうした手間をかけて昆布ははじめて美味しくなるのです。

北海道〜敦賀〜大阪〜鹿児島〜琉球〜中国へと伸びた昆布ロード。中国への昆布販売の中継地として、沖縄には独自の昆布食文化が根付いていきました。
北海道の特産物「昆布」は、北前船と呼ばれた北海道と関西とを結ぶ船で、敦賀に運ばれ、そこから京都・大阪へ運ばれ、
昆布を使った料理やおぼろ昆布や塩昆布などの昆布商品もこの地域で作られるようになりました。
現在でも北前船の停泊地だった北陸や京都・大阪などの地域では、昆布がたくさん食べられています。
北海道から大阪に運べばれた昆布は、鹿児島・沖縄を経由して中国へも販売されるようになり、漢方薬や薬膳の材料として使われてきました。
沖縄には中国への昆布販売中継基地として北海道の昆布が集まりました。
昆布を使った料理も沖縄の伝統食として人々の生活の中に根付いていったと考えられています。
ニシンが昆布に生みつけた卵を昆布と一緒に塩漬けしたものが子持ち昆布です。
ニシンは産卵期になると沿岸に押し寄せ、産卵を行いますが、その時、産卵場所に生える昆布に卵が付着することがあります。
この付着したニシンの卵と昆布を塩漬けにしたものが「子持ち昆布」です。
かつて北海道はニシンの豊漁に沸き、北前船によって、「昆布」「ニシン」が関西地区に運ばれていきました。
「昆布」はよろこぶの意味から、「数の子」は子沢山、家族の繁栄の意味から、「縁起の良い食べ物」として、珍重されてきました。
今でも正月料理には「昆布」「数の子」が欠かせませんよね。「昆布」と「数の子」が合わさった「子持ち昆布」は大変縁起の良い食べ物として食べられていたようです。
北海道では、昭和中期になってニシンの漁獲が激減し、この子持ち昆布も生産されることはなくなりました。
近年、留萌というかつてのニシン漁でわいた浜で、ニシンの産卵(群来)によって、海が真っ白になる様子が確認されていますが、
北海道産の子持ち昆布が食べられるのは、まだ、先になるでしょう。
みなさんが見かける子持ち昆布の多くはカナダなどで生産されたものです。
天然に生えている昆布に付着する子持ち昆布はやはり珍品の域を出ず、大量に販売することはむずかしいようです。
このため今は、産卵のため押し寄せたニシンを生簀に追い込み、そこに昆布をたらして二シンの卵を付着させたものが多く販売されています。